オーナーです。今回は研磨のお話「番手(粒径)」について
コロナウイルス関連で二週間脱線記事を書いてきましたが、久し振りに仕事関係のブログです。
砥粒の種類については過去に一度書いています(2017/2/28)が、今日は砥粒の大きさについてです。
写真:ネットより
このブログでは教科書的な話ではなくて、実務に生かせる職人の知恵を書く事を心掛けています。ですのでJIS粒度についての詳しい説明はJIS R 6010 (研磨布紙用研磨材の粒度)をご覧ください。ここではそんなお堅いサイトには載っていない裏話を書きます。
もともと研磨布紙の粒度規格は世界各地でバラバラで、EUのFEPA規格、アメリカのANSI規格、日本のJIS規格などがありました。それがやがて貿易が盛んになり、規格の違う研磨布紙が入り混じる問題点が指摘されて日本では1991年にようやくFEPAに準拠したJIS6010が制定されました。これにより、日本の研磨布紙の各番手の粒径はFEPAと同じになった・・・はずでした。
資料 旧JISと新JIS粒度の比較表 研磨布紙協会より
ネット上に公開されている粒度分布の表には数字の前に「P60」と云うようにPが付いています。これがISOに準拠した国際規格のP粒度です。しかし多くのユーザーが手にする研磨布製品の粒度表記は「#60」と云ったように「#」が付いています。これは旧JIS番手表記です。これはどうしてなのでしょう?
1991年以降 新JIS規格品は「P」表記するように通達があり、1997年までが移行期間と決められましたが、実際の市場では今も旧JIS規格で研磨布が流通しているので「#」表記なのです。
どうもこれには色々あって「世界標準に従います」と云う建前と、「今更同じ番手で急に粒径を変えるなんて無理」と云う本音があるようです。
現場の研磨担当者は、工程毎の番手を決める際に大変な苦労をして現在に至ってる訳です。最終仕上げ粗さはメッキの仕上げや納入先の了解を得てミクロン単位の調整をしています。急に変わって貰っては困るのが研磨の仕上げで、そんな事になれば業界全体が大混乱してしまいます。
実際には市場に浸透した品種の砥粒のサイズを変える事は出来ないのですが、海外のP粒度の研磨布が流通したり、一部国産でも新JIS適合品もあるようで、市場ではそれらが混在していると云えます。
なんていい加減な話なんだ!と思うかもしれませんが、もともと番手で仕上げ粗さが決まる訳ではないので、業界的には何の問題にもなっていません。その辺の話を次の機会に「研磨のお話」で書きますので楽しみにして下さい。
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