オーナーです。今回は「フラップホイール」その5、羽根枚数についてお話します。
皆さんは同じように作ったフラップホイールの羽根枚数は必ず同じだと思いますか?
工業製品なんだから同じはず。
品質管理上、同じにすべき。
と、思われるかもしれませんが実は同じであるとは限りません。
ある時、非常に几帳面なお客さんから「おたくのフラップホイールの羽根枚数を数えたら時々枚数が違う事が判った。品質管理上問題じゃ無いか」と連絡を頂きました。私が「羽根枚数を揃える方が品質はバラつくんですよ」と説明すると大変驚かれました。
それは何故か?
農作物、例えばタマネギやジャガイモの大きさがバラついていても誰も文句は言いません。オーナーも最近男の手料理をするのですが、ジャガイモ1個と言われて、倍ほど違う大きさの二つを前に悩むことしばしばです。それはさておき工業製品の場合は、寸法や重量が同じ事が当たり前と思っている事でしょう。研磨布(サンドペーパー)もれっきとした工業製品でJIS規格もありますが、その厚みに関してJISでは言及されていません。
厚みを調べるときは複数枚で調べて平均を取る
研磨布の原料ロールは一見、金属のコイルに似ていますが、決定的に違う所があります。それは金属のコイルは圧延ラインで作られているのに対して、研磨布は塗装ラインで作られている点です。ロールで挟んで素材の厚みを調整する圧延に対して、塗装ラインの場合は吹き付けコーティングで乾燥するまで触れることすら出来ないんです。
研磨布は基材と呼ばれる生地の上に接着剤で砥粒をサンドイッチするような形で作ります。出来たてはペンキ塗り立て状態で、長い乾燥炉をゆっくり通過して乾かします。何本もの物干し竿にたわませたまま入口から出口に動くんです。接着剤が柔らかいと重力に負けて垂れてきて、一番底のU字部分が他よりぶ厚くなります。逆に物干し竿に掛けてる部分は薄くなります。そうした差を無くそうと最近の乾燥炉では物干し竿に掛る位置が自動で少しずつ変わる仕組みになっていたりしています。
永塚工業カタログより転載
このようにして研磨布の厚みのバラツキは時代とともに改善されていますが、それでも同じロット(原料ロール)の中でも最大5%程度のバラツキがあり、ロットが変わるとさらに変わってしまう場合があります。羽根枚数は材料原価に関わるので二次加工メーカーとしては頭が痛いです。
厚みが違っても羽根枚数を数えて同じにすれば良いと思うかもしれません。一応弊社では製品毎に基準となる枚数は決まっていて、そこから組立てがスタートします。
しかし厚くなった時には所定の枚数が入らない場合があり、薄くなった場合は根元が遊ぶほど緩い製品になってしまいます。フラップホイールは回転体なので、回転バランスが取れている事が最低条件です。根元に遊びが出るような作りではバランスの悪い製品になってしまいます。ですので一定圧力で金具に入る最大枚数を組み込むようにする事で、密度が均質なバランスの良い製品作りを目指しています。
前述の非常に几帳面なお客様の再登場です。
「お宅のフラップホイール、羽根枚数xxx枚の奴が一番良いんだ。全部それにしてよ」
この返事はお判り頂けると思います。羽根枚数はあくまで結果。弊社は羽根密度が同じになるように管理しています。製品によって研削性、寿命に僅かな違いが出るかもしれませんが、幾つかの平均を取って評価下さい。宜しくお願いします。
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