オーナーです。今回は研磨のお話「SFホイール」です。
弊社には他社に無い独自の研磨ホイールが幾つかあります。前回ご紹介したNFホイールもそのひとつですが、SFホイールも弊社のアイデアが詰まった独自商品です。
創業者の父、札谷餘光はもともとメッキ薬品の会社に勤めていたので、営業でメッキ業者さんの現場を回ることが多くありました。溶剤や工程を指導していたようですが、どんなに上手くメッキを付けても下地研磨が悪ければ良い仕上がりになりません。メッキ工程の指導をしているうちに、どうしても下地研磨に首を突っ込まないといけなかったと生前良く話をしていました。
昭和40年代ぐらいまで、下地研磨にはエメリ粉を使ったエメリーバフ(通称鉄バフ)がよく使われていました。鉄バフは安価でありながら切れが良く、馴染みが良く、そして仕上げ目が柔らかいのでメッキの下地研磨にはうってつけでした。しかし鉄バフは工業生産が出来ず、研磨工と呼ばれる職人さんが事前に接着剤となる膠を溶かしてエメリ粉と混ぜ合わせ、それを芯となるバフの表面に乗せ、更に乾燥させると云った工程が必要で、やがて手軽な研磨ベルトが使われるようになりました。
研磨ベルトは膠に替わってレジンボンド、エメリ粉に替わってアルミナ砥粒が使われています。量産されるので箱から取り出せばすぐに使えます。作業者としてはすごく楽なのですが、砥粒が硬く研磨目が鋭利に入るので細かく仕上げたつもりでもメッキ後の仕上げを見ると細かい疵(スクラッチ)が見える事があり、使い方を色々工夫してやりくりしていました。ベルト研磨の特徴は以前のブログ(研磨のお話「番手と面粗さ」)を参照下さい。
その後スクラッチが浅く出るフラップホイールが使われるようになったのですが、今度は研削力が不足するので、ワークの疵がなかなか取れない、研磨工程や時間が余分に掛ると云う問題点が生じていました。(参照 研磨のお話「フラップホイール」その1~6)
ベルト研磨は研磨布(サンドペーパー)をゴム製のコンタクトホイールで押付けてしまう。一方フラップホイールはサンドペーパーが当たっても、後ろで押さえる物(バックアップ)が無いので逃げてしまう。という両極端な研磨方法です。そこで父は羽根の形を工夫して当たっても逃げないようにする方法を考えました。それが「SFホイール」です。
私の世代は子供の頃、良く新聞紙を丸めてチャンバラごっこをしました。ぺらぺらの新聞紙でも丸めると腰が強くなっておもちゃの刀にできます。それでいて叩かれてもそもそも素材が新聞紙ですから怪我したりする事がありません。適当な腰があって、しかも喰い込みが浅い・・・これだ!と思ったようです。柔らかいサンドペーパーを丸める事で腰を強くし、ワークに当たっても逃げないようにしました。しかし生地が柔らかいので、研磨をしている先端部はワークに馴染むようになります。
「SFホイール」はメッキの下地研磨で特に有効ですが、#180~#600の軽研磨で研削力不足を感じておられる現場では是非お試し頂きたい製品です。150φ~380φが製作可能です。ツメ金具を使った製品なので、バフと同じ感覚で枚数を重ねて幅出しします。バフレースでも自動機でも使用可です。詳しくは弊社営業までお問い合わせ下さい。
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