オーナーです。今回は研磨のお話「フラップホイール その6」です。
フラップホイールは研磨布(俗に云うサンドペーパー)を使った製品としては非常にポピュラーで、幾つものバリエーションがあります。今回はフラップホイールの最終回としてそのいくつかをご紹介します。
1.広幅ホイール
フラップホイールの羽根は砥粒面が回転方向に真っ直ぐ向いているので、同じ外径でも幅が広くなればなるほど空気抵抗を大きく受けます。流体力学を学んだ人なら理論的に説明出来るのでしょうが経験則でしか話ができずすみません。羽根の幅が広くなると空気が逃げ場を失って抵抗が高まり、羽根が耐えきれず横方向にくの字に折れ曲がってしまいます。これは研磨の現場ではよく知られている事です。
羽根が折れ曲がるのを解消する最も簡単な方法は75~100幅毎に羽根にスリットを入れる事です。予め空気の逃げ道を作ってやることで、予測不能な箇所が折れ曲がる事を無くすためです。
ただし板研磨ではスリットが真っ直ぐだと筋目になって出るのでらせん状に入れる(スパイラルカット)必要があります。(写真左)
逆にセンタレス研磨ではスリットを入れるより幅の狭いホイールを中間フランジで連結する方が簡単です。
広幅ホイールの代表格は車両研磨用ホイールです。弊社ではスパイラルカットではなくて羽根をらせん状に巻き付ける独自の製法で「ワイドマックス」の製品名で製作しています。補強金具を一切使わないSDG’sな製法です。
また連結式では最大15個のホイールで1500幅のホイールとして納入しています。(写真右)
2.スリットホイール
広幅ホイールで見られるスパイラルカットではなくて、羽根先に数ミリ幅の切り込みがある製品をスリットホイールと呼びます。用途としては異形物の研磨です。ワークに凸凹がある場合、通常のフラップホイールを使うと頭頂部にしか当たらないので、羽根先にスリットを入れてブラシのようなイメージで凸部も凹部も当たるようにします。
弊社ではスリット幅は3mm以上なら任意で製作可能です。但しスリットは細かく入れるほど研削性が落ちてライフも短くなるので注意下さい。
3.スペッサーホイール
羽根の当たりをもう少しソフトにしたいと云った時にスペッサーを挟むことで枚数調整をします。多くはスリットホイールの場合に使います。長い羽根とスペッサーの対比を任意に調整してお客様の求める硬さに仕上げます。
ここから先は製品の名称はありませんが、市場で見るフラップホイールのアレンジです。
4.ミックスタイプ
通常フラップホイールの羽根は1種類の原料で作られますが、まれにA砥粒とZ砥粒を混ぜた物とか綿布と合繊を混ぜた物があります。どちらか一方だと結果が満足出来なくて苦肉の策で混ぜちゃったケースが殆どだと思いますが、オーナーはあまり賛成しません。
理由としては1:1以外にも組合せパターンが色々出来すぎて、製造者として管理しきれないからです。研磨の現場では理屈はどうあれ結果良ければそれで良しです。なので上手くいってる物を否定はしませんが、調子に乗って組合せをいじりだすとドロ沼にはまるので注意下さい。
5.羽根を寝かせたタイプ
以前フラップホイールの使い方のところで紹介しました。フラップホイールの羽根がバタつくのを抑える意味で最初から羽根を極端に寝かせて根元を固めたホイールです。
弊社ではお客様のご希望で作ったケースはありますが、決められた角度で金具に植えると云う事が難しいので「出来るだけ寝かせる」と云った感じになります。
このタイプを求める場合は、柔らかな基材の研磨布を選ぶ、羽根を通常より長くする、使用時に回転数は低速にすると云った合わせ技が必要だと思います。
6.羽根を斜めに植えたタイプ
普通フラップホイールの羽根は真っ直ぐワークを叩きます。遠心力を使って砥粒面が叩きつけられる事で研削性を出そうとしているのですが、叩きつけられる衝撃で一定の研磨痕(チャタマーク)が出る場合があります。そこで少し羽根に角度を付けて一度に当たる衝撃を和らげようとする方法があります。弊社でも依頼を受けて製作した事はありますが、商品のラインナップには乗せられません。何故なら非常にレアな依頼なために手作業で角度を付けることしかできず、常に同じ角度の製品が作れないからです。また、角度を付けると製品の幅が短くなります。製品幅を守ろうとすれば作る角度毎に羽根の幅を変えなければなりません。課題の多いアレンジと言えます。
これまで6回に渡ってフラップホイールの話を書かせて頂きました。次回から研磨のお話はいよいよ弊社独自の製品になります。ご期待下さい。
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